折りしも雨風激しき後ろより 兜のしころを引っ掴み
引き戻さんと エイ と引く 綱も聞こえしつわものにて
彼の曲者に諸手をかけ
よしゃれ 放しゃれ しころが切れる しころ切れるは
いといはせぬが たった今結うた鬢の毛が
損じるは もつれるは七つ過ぎには行かねばならぬ
そこへ行かんすりゃ コチャ 気にかかる
誰じゃ 鬼じゃないもの私(わし)じゃもの
兜もしころも らっちもいらねえ
サーサ 持ってけ しょってけ
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[解説]
地歌のおどけ物に、”綱”という物があり端唄風に作り直した。
源 頼光の四天王の1人に”渡辺の綱”という人がいて
京の東寺の羅生門で鬼神の片腕を斬り取った事で天下に
名を知らしめた話。
初めは、物々しい義太夫調で 途中からガラリと三下りに
転調してから 軽妙さを見せる趣向になっている。
蒙る :受ける
しころ :兜の後ろに垂れ手首を覆うもの
つわもの :兵士・勇士
七つ :午後4時過ぎ
らちもない:だらしない
一般の端唄にはない語り物の口調ですから難しい曲なんでしょう?