せき来る涙 堪えかね
憂さを忘れぬ 盃の酒の味さえ ほろ苦く
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少々 江戸端唄のネタ切れで 今回は小唄の紹介です。
でも 豊静師匠の唄で きちんとお稽古をつけて戴いたので
本来は 本手と上調子で演奏します。
【解説】
小唄の方では 『鶴八鶴次郎』という方が一般的かもしれません。
原作者は 川口松太郎 ストーリーは・・・
大正の中頃に人気の高かった新内語りの一組。
男の太夫に女の三味線弾きは珍らしくもあるが 二人は表向き兄妹と
いうことになっていたが。
鶴八は先代の一人娘で 弟子だった鶴次郎にとって主筋に当る。
女ながら芸にかけては鶴次郎にも絶対譲らず 仲が良いのに喧嘩が
絶えなかった。
興行先で 大入り札止めの名人芸を打上げた二人は大阪花月劇場への
旅興行を機会に 高野山へ 先代鶴八追善の法会に出かける。
芸抜きの約束で仲の好い二人の姿。
珍らしくしんみりした雰囲気の中で 鶴八が結婚話が持上っていると
切り出す。
相手は先代からの御ひいき 料亭『上野伊予善』の息子・松崎敬二。
嫁入りする以上 三味線を捨てるのは当然。
芸一筋に生き続け 喧嘩ばかりで愛し合っていたことにも気付かなかった
二人は初めてしっかり抱き合う。
鶴次郎は かねて老後に備えて寄席を作り 鶴八と晴れて夫婦に
なろうと考えていた。
それに必要な金を鶴八は母の遺産といって持ち出す。
ところがその金が 実は松崎から融通された金と知った鶴次郎は怒り
周囲の奔走も空しく 鶴八は敬二の許に嫁入り 二人は本当に
別れてしまった。
二年の歳月が流れ 鶴次郎は場末の寄席に荒れた芸でその日を送り
一方堅気の女房として幸せな鶴八。
こうした二人を口説いた興行先の佐平は 二年ぶりで新富座の舞台に
鶴八鶴次郎を並べる。
超満員の客に鶴八は芸に生きる歓びを味う。
折も折 名優・守田勘弥から帝劇に出演をとの申し出・・喜ぶ鶴八。
だが身を以って芸人のわびしさを知った鶴次郎は 鶴八が堅気の
女房で暮してこそ女の幸福と信じ 心にもない雑言を吐いて鶴八と別れる。
夜更けて鶴八が待ち受けた敬二の胸に身もだえして泣いている頃
居酒屋で酔いつぶれた鶴次郎は、遠く聞える新内の音にむせび泣いていた。